最近、“冷え” とか、“平熱” とか、体温に関する話をよく耳にする。女性にとっては身近な話題かもしれないが、男たちは体温に関して無頓着な人が多いように思う。ぼくもそのひとりだ。体温計なんて 『だるい、風邪かな・・・』 なんて時にしか手にしないから、普段は平熱を気にするようなこともない。だいたい 『熱がある』 という言い方からしておかしい。ぼくたちは、常時35℃〜37℃の熱を発しながら生きている。だから、意味合いから考えると 『いつもより高い熱が出ている』 つまり 『熱が高い』 が正解だ。ぼくたちは、普段、熱を発していることさえ忘れて生活していることがよく分かる。だが、ここ数年は、毎年のようにインフルエンザが流行し、あちこちから39℃なんてびっくりするような値を聞くようになった。なんとなくでも体温を意識せざるを得なくなった。

  健康な人の平熱の平均値は36.8℃だそうだ。もう少し詳しく言うと36.89℃±0.34つまり36.55℃〜37.23℃だそうだ。これではちょっと高いような気がするがどうなのだろう。ぼくの周りにはこれほど平熱が高い人はいない・・・と想像はできるが、確認した訳ではないので自信はない。ぼくが小学校低学年の頃は、学校で定期的に体温を測っていた。当時の平均体温は36.5℃だった。ぼくの平熱は36℃そこそこだから、教室で体温計を見ては36.5℃まで上げようと必死だったのを思い出す。そんなことから、実際の平均体温は36.3℃ぐらいではないかと勝手に認識していたのだが、大いなる勘違いである可能性が出てきた。同じ36.8℃の体温でも、平熱が36℃の人と36.8℃の人では意味が違ってくる。いつもは36℃の人が36.8℃になったら、それはもう微熱と言ってもいい。“異常” な状況になったということだ。人間の体温において0.8℃の差は大きい。


  最近は、平熱が35℃台の人が増えているという。特に女性や子供に多いそうだ。体温が低いと健康上どのような問題が生じるのか。目にした記事には、体温が1℃下がると体の免疫力が37%下がるとあった。細菌やウイルスに立ち向かう力が約4割もそがれてしまうというのだ。これでは病気にかかりやすくなってしまう。風邪をひきやすいという人は低体温を疑わなければならない。


  逆に体温が上昇すると免疫力は大幅にアップするそうだ。ぼくたちは、熱が出ると何だか急に具合が悪くなったような気になって、すぐにでも熱を下げないといけない、という心持になってくる。薬局や病院に走って解熱剤を手に入れなければと必死になる。熱が下がりさえすれば風邪が治るなんて錯覚をおこしてしまうのだ。病院も待ってましたとばかりに抗生物質や解熱剤を処方してくれるのだが、冷静に考えるとどこかおかしい。熱が出るということは、体が体温を上昇させて免疫力を上げ、風邪のウイルスを撃退しようとしている証だ。普通の風邪の場合、熱は2、3日で治まる。診察してもらうことは大事だが、ウイルスとの戦いをじっくりと見守る方が自然ではないだろうか。もちろん、栄養や水分をしっかりとることも大切だ。ただ、あまりに高熱だったり、風邪以外の病気の可能性があったりする場合は別だ。そんな時は信頼できる先生の言葉に従いたい。


  体温が低くなると細菌やウイルスを退治し難(にく)くなることは分かった。その他にも、肩こり、腰痛、便秘、肌あれ、生理痛・・・今では、これらの症状も低体温が原因のひとつだと言われている。体温が下がることで血行が悪くなり、血液が汚れて様々な病気の元になるというのだ。結局のところ、低体温であることのメリットはひとつとしてなさそうだ。さて、どうやったら、体温を上げることができるのだろう。


  低体温の原因は、“運動不足” と “食生活の乱れ” だと言われている。体の熱を作り出す主役は筋肉だ。体を動かすことが少なくなると筋肉量が減ってしまい、作り出される熱量も減るということになる。一方の食事だが、現代人は体を冷やす食品や水分をとり過ぎているらしい。積極的に体を動かして筋肉を作り、毎日汗をかいて余分な水分を外に出すことが大事だということだ。そして、できるだけ体を温める食品を摂るようにすることが大切だ。ここで問題なのが体を、“冷やす食品”、“温める食品” は何かということだ。以下、代表的なものをあげてみよう。

『体を冷やす食品』
白米、うどん、白パン、脂身の肉・白身の魚、牛乳・バター、酢・マヨネーズ、葉菜、バナナ・パイナップル・みかん、白砂糖、洋菓子、コーヒー、白ワイン、ウイスキー、ビール

『体を温める食品』
玄米、そば、黒パン、赤身の肉・魚介類、チーズ、塩・味噌・醤油、根菜・海藻、りんご・葡萄・プルーン、黒砂糖、和菓子、紅茶、ワイン、日本酒、黒ビール

  なるほど!と思えるものもあるし、ええっ?とピンとこないものもある。さてさてどうしたものか・・・。こういうことにあまり惑わされてもいけないとは思うが、頭の片隅にそっと置いておくぐらいの価値はあるのではないだろうか。例えば、『今日はうどんではなく、そばにしよう』 とか 『さっきコーヒーを飲んだから今度は紅茶にしよう』 とか 『バナナじゃなくてりんごを買おう』 とか・・・。ほんのちょっと参考にするだけでもいい。チリも積もればというが、目には見えない積み重ねは、いつか必ず大きな差となって現れてくる。ぼくもいい勉強になった、これを機会に少しずつ変えていってみようと思う。


  体温を上げるのに、もうひとつ重要なことがある。“風呂” だ。シャワーですますのではなく、ゆっくりと湯船につかることが大切だ。風呂に入って体温を1℃アップさせるのが最適だと言われている。体温が1℃上昇すると免疫力は5倍にもなるそうだ。すごい!!
◆ 湯船に入って体全体を温めることで血液の循環が活性化され、細胞の働きが向上する。
◆ お湯の水圧で血管やリンパ管が刺激を受けることで、血行が良くなる。
◆ 発汗によって皮膚からも老廃物が出ることによって、血液をきれいにする効果がある。
まったくいい事尽くめじゃないか。毎日、何気なく入っていた風呂にこのような効果があるとは知らなかった。つくづく日本人で良かったと思う。ここで、ひとつ注意がある。心臓や肺が弱い人、あるいは、長時間入っていたい人には、鳩尾(みぞおち)から下だけをお湯につける半身浴がいいそうだ。上半身を冷やさないようにすることも忘れずに。

  参考になどならないと思うが、以下、ぼくの入浴の仕方。
◆ ドアの外にipodを置き小さなスピーカーで音楽を鳴らす。音量は控えめ。
◆ 湯船につかりながら20分〜30分本を読む。
◆ 本を風呂の外に出し、風呂の灯りを消す。脱衣所の灯りで十分だ。もう一度湯船につかりボーっとす
  る。
◆ 頭から下へと順番に洗う。この時、ヒゲを剃ることも忘れない。
◆ シャワーを浴びて終わり。
おおよそ、50分ぐらいの工程だ。これからは、ますます楽しみになりそうだ。


  最後に、体を温める最高の食品を紹介しよう。それは・・・、“生姜” だ。ショウガには発汗作用があり、血管を広げて血圧を適正にしたり、脳の血行を良くしたりする働きがあるそうだ。摂り方は工夫しないといけないが、簡単なドリンクレシピをひとつ紹介しよう。紅茶にすりおろしのショウガを適量加える。そこにハチミツを加えて出来上がり。これなら、なんとかなりそうだ。ぼくは、健康おたくではないが、できるだけ長い間、背筋を伸ばしてステージに立ちたいという思いがある。そのためにならどんなことでも試したいと思うのだが、風呂と生姜なら御の字だ。さあて・・・今回も無事に書き終えることができた。気分良く風呂にでも入るとするか。

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