ボーっとしたいなあ

目覚まし時計をかけないで寝て
好きな時間に起きて
もうこんな時間かよく寝たなって小さく満足して
豆腐を乗せたご飯を食べて
醤油をちょっとだけたらして
具だくさんの味噌汁もあって
おかあさんが漬けた梅干しが残り少なくなって
でもやっぱり3粒は食べたいからもちろん食べて
またもらってこないといけないなって記憶して

新聞を開いて
なぜだろう必ず日付を確認して
ざっと1面を眺めて
そのまま目を下の方に持っていって
全国の天気をチェックして
今日の東京は暖かいなって頷いて
そのまま下段の本の広告を見て
タイトルや見出しは大切なんだなって納得して
コラムを読んで
小さな枠にまとめられた400数文字に感動して
1面をめくると2面と3面がパッと開いて
新聞の大きさは絶妙だなって感心して
手触りやめくるときの音が気持ちよくて
音がとにかく気持ちよくて
政治の記事や社説にもサッと目を通して
週刊誌の見出し記事を読んで勉強して
カラフルな企業の広告も案外ポイントになっていて
国際面や経済面にも興味深い記事があって
細かい文字が並ぶ株のページには縁がなくて
人生相談の答えの多くは核心を突いていて
曖昧にはせず言い切る力強さがあって
真剣さが伝わってきて
スポーツの記事はもちろん大切で
1日と16日には王将の餃子無料クーポンを切り取って
財布に入れて
地方の記事もなんとなく楽しみで
社会面もちゃんと読んで
最後のテレビ番組もチェックして

散歩にでも行くかってあてもなく家を出て
いつもは通らないような道を行って
ただ目に入ってくるすべてを受け入れて
気になったものがあったらじっくりと観察して
道端の草花を見ながらこの花なんて言うのかなきれいだなって写真におさめて
植物の存在はありがたくて
自販機の場所や商品も一応確認して
おやこの店はなんだ?知らない店を見つけてとりあえず入ってみて
珈琲が意外にうまかったりして
店の隅にあった雑誌をパラパラとめくって
アイホンでメールをチェックして
会計の時にお店の人とさり気ない話をして
歩いていると声をかけられることも多くなって
気の向くまま足の向くまま歩いて
季節の匂いを味わって
ひんやりとした空気を胸いっぱいに吸い込んで
ひと回りして帰ってくると2時間ぐらい経っていて

積んであった本をどれから読もうかと悩んで
座っていたらまた眠くなって
昼寝が気持ちいいのは経験上知っていて
夜寝むれなくなるのもわかっていて
それでもごろんと横になって
オイルヒーターのじわじわとした温かさが沁みてきて
時間が経つのは早くて
冬はすぐに夜がやってきて
またお腹がすいてきて
何を食べようかなと考えて

スーパーに出かけたついでに
文具店に寄って
ノートやボールペンに囲まれて
気持ちよくなって
小さなスケッチブックを買って

夜は夜でたまっていたビデオを観て
中国の春秋戦国時代の歴史ドラマを観て
秦の始皇帝が中国を統一する2世代ぐらい前の話で
紀元前200年300年前の中国はすでに完成されていて
権謀術数渦巻いていて
国の存続のためにはなんでもして
地続きで国境を接していることの怖さを考えて
そのころの日本はまだまだ弥生時代で
島国の恩恵は計りしれなくて

コルトレーンのバラッズを聴きながら風呂に入って
森の香りの入浴剤を入れてホッとして
頭を洗って
頭を洗うって言葉にするとおもしろくて
そう髪を洗って

いただいたポンカンを食べて
ヨーグルトを食べて
眠くなるまでユーチューブを見て
次の日のスケジュールを確認しなくてもよくて
また目覚まし時計をかけないで布団にくるまって

ボーっとしたいなあ
ぼーっと
ボーっとしたいなあ

Copyright(C)2013 SHINICHI ICHIKAWA
Home Page Top Essay Top